ポイント
- リベルサスは現状世界初で唯一の経口GLP-1受容体作動薬
- 血糖値の低下に加え、食欲も抑えて体重減少効果がある
- リベルサスとダイエットサプリメント、どう違う？
世界初そして唯一の経口GLP-1受容体作動薬リベルサス。
糖尿病治療薬として処方されていますが、ダイエット効果もあるため、痩せ薬としても話題になっています。
処方薬ということで、ダイエット効果もサプリメントよりも強力なのでは…?
と期待を抱く方も多いかと思います。
そこで今回は、GLP－１受容体作動薬がダイエット効果をもつ仕組みを解説した後、リベルサスとダイエットサプリの違いについて、比較検証していこうと思います！
リベルサス(GLP-1受容体作動薬)とは？
リベルサス（GLP-1受容体作動薬）とは一言で説明すると、血糖値が高くなった時だけ血糖値を下げてくれる飲み薬です。
以下でもう少し詳しく説明していきます。
GLP-1受容体とは
「GLP-1受容体作動薬」と聞くと難しく聞こえますが、要はGLP-1(ホルモン)の受容体を作動させる薬、という意味です。
GLP-1というのは、食事をした際に小腸から放出されるホルモンで、テレビでは「やせるホルモン」としても取り上げられていました。
このホルモンの受容体(ホルモンと結合して、ホルモンの効果を発揮させるタンパク質)が、GLP-1受容体です。この受容体は主に膵臓に存在し、食事後に小腸から放出されたGLP1を受容して、膵臓からのインスリンの分泌を促す役割を持っています。つまりこの受容体がGLP-1依存的に働くことにより、食事後に血糖値が上がりすぎない様に制御されているのです。
GLP-1受容体作動薬
GLP-1受容体作動薬は、このGLP-1受容体に結合して活性化させる、GLP-1ホルモンと同じ様な働きを持っています。ここでは、GLP-1受容体作動薬は、GLP-1とほぼ同じものだと考えていただいて結構です。
医学のあゆみ 、2014、249巻5号 、443-443より転載
この様に、GLP-1受容体作動薬は体内でGLP-1と同様に食事後にインスリン分泌を促すことで、血糖値の過度な上昇を抑えてくれる働きをしてくれるわけです。
2型糖尿病は、食事後に血糖値が上昇しても、その応答性が低くなっていることから、インスリン分泌が十分に行えず、血糖値をうまく下げられないという症状です。そこで、人為的にGLP1受容体を活性化してインスリン分泌を促進させる2型糖尿病薬として、GLP-1受容体作動薬として開発された、ということなのです。
リベルサスの何がすごいのか
しかし、GLP-1受容体作動薬はGLP-1同様に小さなタンパク質であるため、経口摂取では消化酵素によって分解されてしまうという問題点がありました。
そのため、GLP-1受容体作動薬は経口投与ができず、皮下注射による投与となり、患者の負担が大きいことが課題とされていました。
そんな中、2021年2月5日に、吸収促進剤であるSNAC(サルカプロザートナトリウム)と組み合わせてGLP-1受容体作動薬を胃でのタンパク質分解から保護することで、消化管からの吸収を実現した経口GLP-1受容体作動薬として、「リベルサス錠」が販売されました。
これにより、2型糖尿病患者にとって投薬の負担が大幅に軽減されることが予想され、話題になっているということなのです。
リベルサスのダイエット効果
GLP-1受容体作動薬にはダイエット効果があることが示唆されていましたが、これまで注射薬であったことから、ダイエット目的で投与するにはハードルが高い傾向がありました。しかし今回のリベルサスの登場によって、実際にダイエット目的に投与する人が増えることが予想されます。
そこで、GLP-1受容体作動薬がなぜダイエット効果がありそうなのか簡単に説明したいと思います。
GLP-1受容体作動薬には、インスリンの分泌を増やして血糖値を下げる作用とは別の作用として、中枢神経を介した摂食抑制作用と、胃排泄遅延作用があります。
リベルサスによる摂食抑制作用
GLP-1受容体は膵臓の他に、中枢神経（視床，視床下部，菱脳，海馬，大脳辺縁系，最後野など）にも存在しており、GLP-1受容体作動薬の投与で摂食回数と摂食量が低下することが報告されています。
これによりリベルサスの服用で、直接的に食欲を抑えることができると考えられています。
リベルサスによる胃排泄遅延作用
胃排泄遅延作用というのは、食べたものが胃の中にとどまる時間を長くする作用です。これは胃もたれに近い感覚になりますので、食事摂取量を抑制する効果につながります。
以上をまとめると、リベルサスは
- 血糖値を低下させること
- 中枢神経を介した摂食抑制作用
- 胃排泄遅延作用
上記３つの働きで、ダイエット効果を発揮すると考えられているのです。
リベルサス VS ダイエットサプリ
効果の違い
リベルサスとダイエットサプリの違いは、まず、薬は症状を確実に改善できるように設計されおり、血糖値の低下や食欲を抑制する効果は十分に見込めるという点です。
また、リベルサスはGLP-1という様々な生体機能をもつホルモンの作用を増強させて、血糖値を低下させたり、食欲を抑えます。一方、一般的なサプリメントは、糖質や脂質の消化吸収を抑えたり、体内で作られる脂肪の量を減らしたり、脂肪燃焼を助けたりという作用が多いです。サプリメントには、直接生体機能を調節するものはほとんどないのです。
例えて表現すると、ダイエット薬リベルサスは水道の元栓を占めた時、サプリメントは節水シャワーに交換した時の、両者の水道料金の差分の様なイメージでしょうか。
入手のしやすさの違い
この様に薬では強力な効果を得られる反面、薬を入手するには医師の処方箋が必要です。そもそもリベルサスは２型糖尿病薬として認可されている物なので、通常の病院ですとダイエット目的には処方してくれないはずです。※
その一方で、サプリメントの利点は手軽に薬局やネットで手に入れらることです。
カロリミットなどのダイエットサプリは、コンビニでも気軽に買えますよね。
※日本糖尿病学会、日本糖尿病協会、GLP-1受容体作動薬を製造販売している製薬企業４社から、GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病治療薬として承認されているが、肥満症の治療、美容・痩身･ダイエット等を目的とする使用に関して、安全性と有効性は確認されていないとし、適正使用するように注意喚起を行っています。
副作用の有無
最後に、副作用の有無です。
薬は強力な効果がある反面、副作用があることも多いです。実際、GLP-1受容体作動薬には、便秘や軽い吐き気などの副作用が伴うことがあることが明示してあります。
それに比べ、ダイエットサプリメントでは副作用がない場合がほとんどです。
ちなみに、アミノ酸の一種アルギニンには、GLP-1受容体作動薬に似た働きがあるという報告がありますので、今後サプリメントとしても同様の効果が期待されるものが出てくることもあるかもしれませんね。
Obesity (Silver Spring). 2018 ,26(11): 1721–1726.
まとめ
痩せ薬と言われているダイエット薬リベルサスは血糖値が高い時だけ、血糖値を下げてくれる糖尿病の治療薬です。さらに、排泄遅延作用、中枢神経を介した摂食抑制作用を持つことで体重を減少させることから、「痩せ薬」とも言われています。これまでは注射薬だけだったのが、経口薬も販売されて飲みやすくなりました。
しかし、現時点では、肥満薬、美容痩身のための使用はできない現状です。
簡単に痩せられる薬、やすやすとは使えないですね、、
アルギニンなどGLP-1の分泌を刺激するものもありますが、まだ、サプリメントとして販売はされていません。
今後の開発に期待ですね…！
コメント