【GLS1阻害サプリメントはつくれる?】
老化細胞除去作用をもつ食品は存在するのか?

カボス写真 その他抗老化成分
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ポイント

  • 老化細胞の蓄積が老化につながる
  • GLS1阻害薬により老化細胞を除去できる
  • カボスがGLS1阻害作用をもつ!?

2021年1月15日、老化細胞のみを死滅させ、健康寿命を延ばすことができる可能性を示した夢のような研究報告が、最も権威性の高い国際科学雑誌の一つであるScience誌にて報告されました。
Science. 2021 Jan 15;371(6526):265-270.

その研究を行ったのは、東京大学をはじめとする日本の研究グループであったこともあり、国内でも様々なメディアで取り上げられ話題になったことは、記憶に新しいことかと思います。
この報告によると、どうやら老化の原因の一つとして考えられていた老化細胞の蓄積を、GLS1というタンパク質を阻害することによってすっかり除去できることがマウスで確かめられた、というのです!

これはつまり、薬やサプリメントによって、不老長寿が実現できるという可能性があることを示しています。

そこで今回は、そのGLS1阻害による老化細胞の除去のしくみを解説するとともに、GLS1阻害薬と同様の機能をもつサプリメントが開発される可能性についても考察していきます!

ではまず、そもそも老化細胞とは何かについて、簡単にお話ししようと思います。

老化細胞の蓄積が老化につながる

老化細胞と聞くと、お年寄りに多い細胞かな??と思われるかもしれません。
間違いではないのですが、たとえみなさんが若かったとしても、決して他人事ではありません。

私たちの体の細胞は、基本的に限られた回数しか分裂・増殖できないことが知られています。正常な細胞はある一定回数分裂すると、それ以後分裂のスピードが緩やかになっていきます。最終的に、細胞は完全に分裂をやめた、増殖停止状態に陥ります
その状態の細胞がいわゆる老化細胞と呼ばれるものの正体です。

老化細胞は加齢だけでなく、さまざまなストレス(酸化ストレスなと)によっても生じます。
老化細胞は分裂を停止してはいますが、その場所に生存したまま残り続けているため、年を取ることで徐々にこのような老化細胞が蓄積していくことになります。
つまり若いうちから、着実に老化細胞は蓄積しているのです。

この老化細胞は、炎症を起こす物質を分泌することが知られており、それにより周辺の組織、臓器が衰えてしまうことから、老化細胞の蓄積はがんや加齢性疾患(動脈硬化や腎障害など)の原因になると言われています。
したがって、蓄積してしまった老化細胞だけを選択的に除去できれば、がんや加齢性疾患の発症を防ぐことができるのではないか?と考えられるのです!

これまで実際に、老化モデルマウスから遺伝子工学的に(ヒトでの応用は倫理的に難しいとされる手法)老化細胞を取り除くと、臓器や組織の衰えが改善されたり、がんや加齢性疾患(動脈硬化や腎障害、非アルコール性脂肪肝など)の発症が抑えられ、健康寿命が延びることはわかっていました。

しかしこの遺伝子工学的手法では我々ヒトで応用することが難しいことや広範囲の老化細胞をターゲットにできないことから、老化細胞だけを除去することができる「薬」の開発が望まれていました。

老化細胞の蓄積の原因となるGLS1の発見

老化細胞のみを薬などで除去するには、老化細胞だけがもった特徴を見つけなくてはなりません。

今回取り上げた研究ではまずその特徴を見つけるべく、老化細胞の生存(蓄積)に必須な遺伝子群をスクリーニングにより探索しました。

その結果、GLS1という遺伝子の発現量が、老化細胞でのみ顕著に増加していることを見出したと報告しています。

GLSは”グルタミナーゼ(Glutaminase)”の略で、細胞内のミトコンドリアでグルタミンをグルタミン酸とアンモニアに変換するグルタミン代謝に関係する酵素です。
老化細胞ではこの酵素が正常な細胞と比べて大量に存在しており、さらに、その酵素反応の際に生じるアンモニア量の増加が、老化細胞の生存維持(蓄積の原因)を支えていたということも明らかになりました。

つまり、老化細胞においてGLS1が多く発現することにより老化細胞は細胞死を免れ体内に蓄積し、その結果として老化が進行してしまう、ということが言えるのです。

GLS1阻害剤により老化細胞を選択的に除去できる

以上の流れから、GLS1を阻害することで、老化細胞のみが除去されるのではないか、という仮説が生まれました。
そこで実際に、老齢マウスへのGLS1阻害剤の投与する実験が行われることとなりました。

 

その結果、仮説通り老齢マウスにおいて、「GLS1阻害剤」により老化細胞のみを選択的に除去できることが確かめられたのです。

また、加齢現象・加齢性疾患疾患・生活習慣病がGLS1阻害剤で改善されることもわかりました。

さらにGLS1を阻害すると、老齢マウスの筋力の低下を抑制したり、腎臓の機能改善、動脈硬化モデルマウスの動脈硬化の指標も改善されるなどの、様々な素晴らしい効果が認められたというのです。

GLS1阻害剤による効果

 

GLS1を阻害する食品はあるのか?

では本題となる、GLS1(グルタミナーゼ)を阻害する作用を持つ食品成分は存在するのか、についてですが、実は今のところ、たった一つだけ報告されています!

それは、果物のカボスから抽出される、ウンベリフェロンという物質です。

 

ウンベリフェロン化学式

ウンベリフェロンの化学構造(wikipediaより)

ココナッツやコリアンダーなどにも多く含まれるこの物質は、ブタノール抽出で得られ(脂溶性)、強力なグルタミナーゼ阻害活性を持っているらしいです。
参考文献:Nat Prod Res. 2020 Jul 3;1-5.

この物質の安全性や生体内での効果などはまだ調べられていない様ですが、GLS1阻害剤と同じような機能をもつ成分が含まれている食品は存在しているということで、夢がありますね!GLS1阻害作用のある食品成分の機能性について今後さらに研究が進めば、サプリメントを摂取するだけで、健康に美しく年を重ねることも夢ではないかもしれません!

まとめ

医療技術等の進歩によって寿命が延びている現代。
楽しく過ごすために、健康に若々しく年を重ねたいものです。
今回取り上げた、老化細胞のみを排除できるGLS1阻害薬は、夢の不老薬となるかもしれません。
研究が進み、同様の効果があるサプリメントも開発されれば、手軽に健康寿命を伸ばすことができ、楽しい老後が待っているかもしれませんね!
定年が伸びるだけかもしれませんが…笑

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