卵子老化が不妊の原因かも?!
【卵子の老化が妊娠・出産に与える2つの影響】

老化と不妊
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ポイント

  • 卵子の老化とは”加齢による卵子の質の低下”を指す
  • 卵子の老化は妊孕力(にんようりょく)の低下、染色体異常の増加に繋がる

“卵子が老化する”ということは多くの人が一度は耳にしたことがあると思います。
今回は卵子の老化が妊娠・出産に及ぼす影響についてわかりやすく説明していきたいと思います。

卵子の老化とは

まずはじめに、卵子の老化とはなんなのでしょうか?
卵子の老化とは一言でいうと、加齢に伴い卵子の質が落ちることです。
卵子の質が落ちると、卵子本来の機能が発揮できなくなり様々な所に影響を及ぼします。

卵子の質の低下は主に女性の実年齢が上昇することが原因と考えられていますが、実年齢だけでなく病気やがん治療薬などによる影響もあると考えられています。

現在の研究では、卵子が大人になってから体内で新しく作られることはないと考えられています。
卵子の元である卵母細胞は女性がお母さんのお腹の中にいる時(胎児期)に作られ、卵巣にずっと蓄えられています。そしてそれは排卵の直前に成長しやがて卵子となります。
そのため正確にいうと、”卵子の老化”ではなく、”卵母細胞の老化”ということになります。
本記事では分かりやすくするために、”卵子の老化”と表記していきます。

ちなみに卵巣は主要な臓器の中で、老化によりもっとも早く機能が低下する臓器の1つと考えられており、盛んに研究されています。

では卵子の老化はどの様な影響を及ぼすのでしょうか?

卵子の老化による影響

卵子の老化による影響①妊娠しにくくなる

年齢を重ねた卵子、つまりは老化した卵子は受精・着床しにくく、出生に至る確率が低くなります。そのため老化した卵子を持っている女性は妊娠しづらいです。

ここで2018年のイギリスにおける卵子提供と年齢に関するデータを見てみましょう。
日本では卵子提供の症例数が少ないため、海外のデータを使用しました。
提供卵子出生率
引用)Fertility treatment 2018: trends and figures | Human Fertilisation and Embryology Authority

こちらのグラフは、体外受精を受けた患者の内、卵子提供(ドナー胚)により妊娠し出生に至った割合と、自分自身の卵子で妊娠し出生に至った割合を示しています。
卵子を提供した女性の実年齢は提供を受けた女性の年齢よりも平均して5才ほど若かったそうです。

自分自身の卵子を用いた場合、35歳以上では出生率が急激に下がっていき、45歳以上で5%未満にまで低下してしまうのです。
それに対して、提供された若い卵子を用いた場合は、年齢によらず高い出生率を維持していることが示されています。

以上のことから、老化した卵子を持っている女性は妊娠しづらいことがわかります。

卵子の老化による影響②染色体異常が起こりやすくなる

卵子の老化によるもう一つの影響は、卵子(卵母細胞)の染色体異常です。

染色体とは?

染色体とは生物の遺伝情報が詰まっているDNAが太く折りたたまれたものです。
卵子にはお母さんからもらった染色体が、精子にはお父さんからもらった染色体が入っています。上記にも記しましたが、卵母細胞が成長し卵子になります。この卵母細胞から卵子になる時に染色体の数を半分にします。なぜ、わざわざ半分にするのでしょうか。理由はとっても簡単です。残りの半分をお父さんの精子からもらうためです。

では染色体異常とは?

卵子(卵母細胞)が年老いてくると、この染色体を半分にする作業(分配、分離)が上手くいかず、沢山渡してしまったり、少なく渡してしまったりします。こういった現象を染色体異常と呼んでいます。また、この様に正常時と比べて染色体の本数が異なる状態を異数体と呼んでいます。
母親の年齢が上がる、すなわち卵子が老化すると、染色体異常は起きやすくなります。
こちらのデータをご覧ください。
染色体変異数グラフ
引用論文)The nature of aneuploidy with increasing age of the female partner: a review of 15,169 consecutive trophectoderm biopsies evaluated with comprehensive chromosomal screening

着床直前の受精卵(胚盤胞)のうち、将来胎盤になる部分(栄養外胚葉)での染色体異常が含まれている割合(染色体異数性の割合)を調べたものです。
女性の年齢が上がる、すなわち卵子の老化が進むにつれて染色体異常のものが増えています。

ちなみに、染色体異常は流産の主要な原因の1つです。
流産のメカニズムは全て解明された分けではありませんが、原因の70~80%が母体側ではなく、赤ちゃん(胎児)の染色体異常と言われています。

その他、ダウン症なども染色体異常による症例の1つです。

まとめ

芸能人のニュースを見ていると、高齢での妊娠・出産も一般的なことの様に感じますよね。
しかし卵子が老化している状態では、妊娠が難しかったり、赤ちゃんに影響が出る可能性が高いです。
子どもを持つか持たないかは自由な選択ですが、いつか子どもが欲しいと思っている方は、男女問わず卵子の老化が及ぼす影響について知って欲しいと思います。

現在、卵子の老化を遅らせる成分についての研究はかなり進んでいます。
子どもが欲しいのに様々な理由でそれが叶っていない人にとって、より良い世界がもうすぐやってくることを筆者は信じています。

注意)
本記事は卵子の老化に焦点を当てたものとなっておりますが、不妊の原因のすべてが卵子の老化というわけではありません。
卵子の老化はあくまでも不妊の原因の1つです。

[参考URL]
日本生殖医学会 ホームページ http://www.jsrm.or.jp/public/index.html (アクセス日:2020/1/25)
日本産婦人科学会 ホームページ http://www.jsog.or.jp/ (アクセス日:2020/1/25)
[参考書籍]
Moore and Persaud,『受精卵からヒトになるまで』,医歯薬出出版,2007年
Bruce Albertsほか,『Essential細胞生物学』,南江堂,2017年
David A. Sinclairほか,『LIFE SPAN 老いなき世界』,東洋経済新報社,2020年

キャッチ画像:Photo by Ashton Mullins on Unsplash

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