カレーに含まれるクルクミンが認知症予防に効く?治療薬アリセプトとの違いは?

ウコンの画像 その他抗老化成分
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ポイント

  • クルクミンはウコンに含まれるポリフェノール
  • クルクミンは認知症予防効果が示唆されている
  • 認知症治療薬アリセプトより期待大?

高齢化社会を迎える日本。
認知症人口は年々増加しており、早急な抜本的治療薬の開発が求められています。

最近は、認知症も生活習慣病と同じように食習慣、運動などのライフスタイルによってその発症リスクが変化することが分かってきましたが、なんと、身近な食品成分でも、その予防が期待できるということがわかってきたというのです!

今回は、その可能性を秘めた成分であるクルクミンについて、その有効性と、認知症治療薬アリセプトとの違いについて調べてみました。

クルクミンとは?

クルクミンはターメリック(ウコン)に含まれるポリフェノールの一種で、黄色い色をしているので天然色素としても用いられます。
カレーが黄色いのはクルクミンの色によるものです。

その成分であるクルクミンは強い抗酸化作用、抗炎症作用を持っており、ウコンドリンクでもお馴染みの二日酔い防止などの肝機能向上効果を始め、多彩な機能性を持っていると言われています。近年では認知症の改善にも寄与する可能性が示され、アンチエイジング分野でも今注目されている成分です。

クルクミンは認知症を改善する?

認知症は他の生活習慣病と同様に、食習慣や運動などのライフスタイルに影響を受けることが分かり、ポリフェノールなど抗酸化作用をもつ成分を摂取するとアルツハイマー型認知症の発症リスクが低下することがわかってきました。

先程述べたように、抗酸化、抗炎症作用をもつクルクミンにも、認知症の発症リスクを低下させる可能性があることを示す論文が、近年いくつか発表されています。

実はカレーやスパイスの摂取頻度の高いインドでは、米国に比べ認知症の発症頻度が約1/4であることが報告されています。その様な背景から、カレーに入っているウコンに多く含まれるクルクミンが認知症の発症の予防に関与している仮説が立てられ、研究が行われるようになったのです。

多彩な機能性をもつクルクミンですが、これまでは体内に吸収されにくいという課題を抱えていました。しかし近年、粉末の微細化・分散化といった食品の加工技術の進歩で、体内への吸収効率が大幅に向上したクルクミン(セラクルミン®︎)の使用が可能になったことから、その機能性についての研究がより進むようになりました。

その研究の一つとして、もの忘れの症状はあるが日常生活にさほど支障がない程度の軽度認知障害(MIC)の方と健常者の混合グループがクルクミン(セラクルミン)を18か月間摂取すると、記憶の指標値が向上することが発表されています1)(記憶テストのグラフ)。
1)Am J Geriatr Psychiatry. 2018 Mar;26(3):266-277.

このことから、クルクミンは記憶力の保持や認知症の予防効果が期待できる可能性があるといえます。

クルクミンの記憶テスト

Am J Geriatr Psychiatry. 2018 Mar;26(3):266-277.より引用

クルクミンと認知症治療薬アリセプトの違い

認知症のうち最も発症頻度の高いアルツハイマー型認知症の治療薬で有名なものは、ドネペジル塩酸塩(商品名:アリセプト)です。では、クルクミンの効果は認知症治療薬アリセプトと比較するとどれほどの違いがあるのでしょうか?

アリセプトとクルクミンの効果の比較

ラットに軽度神経認知障害を神経毒により誘発させるモデルを用いて、アリセプトとクルクミンの効果を評価した研究論文を見つけました2)。
2) Neurotox Res. 2017 May;31(4):560-569.

本論文ではなんと、神経毒で低下した記憶スコアが、クルクミンおよび認知症治療薬アリセプトにて同程度の改善効果があったと報告しています。また、それらを併用することでさらに顕著に記憶スコアを改善することが示されました。

クルクミンとアリセプトの比較実験

Neurotox Res. 2017 May;31(4):560-569.より引用

以上より、クルクミンはアリセプトと同程度の効果が期待できるとともに、両者の併用でさらなる効果が得られる可能性も示唆されています。

アリセプトとクルクミンの働きの違い

ではクルクミン体内でどの様に働くことで、認知症の進行防止・改善が見込まれるのでしょうか?

そもそもアルツハイマー型認知症の発症機序はいまだ明確に解明されていませんが、原因の一つに異常なたんぱく質(アミロイドβやタウなど)の蓄積による脳細胞の死滅が、様々な障害に繋がっていると言われています。つまりこのアミロイドβの蓄積を防ぐことが出来ればより効果的に予防・治療につながると期待されているのです。

そこでまず、認知症治療薬のアリセプトは、アルツハイマー病で結果的に減少してしまった神経伝達物質のアセチルコリンを補うように働きます。つまりこれは、病気の進行を遅らせることは出来ますが、根本的治癒にはつながりらないことが特徴です。

一方でクルクミンは、試験管内でアミロイドβの凝集・線維化を抑制し、さらに凝集・繊維化してしまったアミロイドβの分解も促進すること3)、アルツハイマーのモデルマウスの脳でアミロイドβの蓄積を抑制すること4)などが報告されています。
3) News letter 認知症と食生活の関係を探る 2007年8月 p.4
4) J Biol Chem. 2005;280(7):5892-5901.

つまり、クルクミンを摂取することで、そもそものアルツハイマー病の発症を予防できる可能性に加え、一度発症してしまっても、その症状を改善することが期待できるかもしれないのです!

この様な科学的根拠(エビデンス)は徐々に蓄積されつつあり、クルクミンの経口摂取がアルツハイマー型認知症に対して本当に有効かどうか、大規模な臨床試験の結果が待たれています。

まとめ

ターメリック(ウコン)に含まれるクルクミンの注目の機能には、認知症の発症リスク低下があります。試験管内、動物実験において、アミロイドβの凝集・線維化の抑制、分解が証明されており、ヒトでは経口摂取により記憶力が改善することが報告されています。

現在認可されているアリセプトなどの治療薬は進行を抑制する効果はありますが、治癒に対する効果は期待できないとされているので、クルクミンがヒトでもモデルと全く同様に作動する場合、画期的な治療法となることが期待されます。

アルツハイマーの発症は70歳代より増加し、アミロイドβの蓄積は発症する約20年前から始まっているといわれているので、今回見てきた様な研究成果を参考にし、若いうちから食習慣や運動習慣を見直すとともに、クルクミンの摂取も接触的に行ってみるのもいいかもしれませんね!

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