ポイント
- NMNはビタミンの仲間で、老化を防ぐ遺伝子を活性化させる!
- 実際にマウスなどでは老化が抑えられる!?
老化を防ぎ健康寿命を延ばしてくれる成分として急速に話題になっているNMN。
最近ではホリエモンさんや、オリラジの中田敦彦さんまでもが、自身のYouTubeチャンネル内でNMNについて語っているほど、注目を集めている成分です。
しかし、いくら話題になっているといえど、NMNを飲むだけで寿命が伸びるなんて絶対に怪しい!!
と感じる方は多いと思います。
実際、NMNをネットで調べると、効能だけを説明する怪しい記事や、難しい単語が並び、なかなか理解できない記事ばかり。
結局どんなものなのか、どれくらい信用できそうなのか、分からなくなりますよね…
そこでここでは、難しい単語を極力避けながら、
- NMNとはどんな物質か?
- そもそも老化とはなにか?
- NMNはなぜ老化を防ぐのか?
- 実際にNMNで老化が抑制された例はあるのか?
というポイントに絞って、できるだけわかりやすく説明していきたいと思います!
NMNとは?
NMNは、ビタミンの一種
NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、ビタミンB3の仲間です。
ビタミンの仲間なのであらゆる食材に微量に含まれていますが、枝豆やブロッコリー、血液などに特に多く含まれているようです。
つまり、人工的に作られた怪しい化合物ではなく、もともと全ての生き物の体内にあるようなありふれた成分だということです!
とりあえず、危険そうな物質ではないことがわかり一安心ですね。
ではなぜこのありふれた成分は、我々の老化を防ぎ、寿命を伸ばす可能性があるのでしょうか?
その答えは、そもそもなぜ人は歳を重ねると老けていき、健康でなくなってしまうのか?という根本的な問いから得られます。
老化とはなにか?
老化は加齢による体の機能低下
そもそも老化とはなんなのでしょうか?
老化とは一言で言うと、加齢により体の機能が低下してきていることを示します。
その機能低下によって、糖尿病や、アルツハイマー病、そして各種がんなど、体の中でも様々な機能の異常が生じると考えられ、これらにより私たちの健康寿命は脅かされてきます。
では、なぜ歳をとると体の機能は低下していくのでしょうか?
その根底には、サーチュインという遺伝子が密接に関与しています。
サーチュイン遺伝子が老化を抑えるが、加齢と共に抑えられなくなる
近年、老化の根元は、サーチュイン(sirtuin)という遺伝子によって制御されていることが明らかとなってきました。
[参考文献]
国立遺伝学研究所 小林 他, (2013) [和文概略]
Sangita 他, Sci. Adv. (2016) [英文総説]
サーチュインは、私たちが若い頃は活発に活動しており、老化の原因となるもの(遺伝子発現の不安定化など)を下図の様に押さえ込んでくれています。
しかし、実はサーチュインの活動は、歳を重ねるにつれて徐々に低下してしまうそうなのです。
それは、サーチュインのエネルギー源ともいえる、NADという物質が加齢と共に体内で減少してしまうからであることがわかってきました。
この事実は、数多くの論文でも示されています。
「NADは加齢と共に制限されていき、それはサーチュインの活性に影響を与える。
(Imai et al., 2014)」
引用論文:Imai 他, Trends in Cell Biol (2014) [英文総説]
参考論文:Massudi 他, ProS ONE (2012) [英語論文]
つまりここまでをまとめると
若い頃は老化を抑える遺伝子(サーチュイン)が活発に働いているが、その遺伝子のエネルギー源(NAD)は加齢とともに体内で減少してしまうことから働きが鈍くなり、老化が進行する
ということになります。
イメージとしては以下の様に、歳をとるとおにぎりが少なくなることでサーチュインが働けなくなるため、老化原因を抑え込めなくなり老化が進んでしまう、ということです。
以上を踏まえると、老化を抑制する遺伝子(サーチュイン)のエネルギー源(NAD)が体内で枯渇していくことこそが老化の原因であるならば、外から別でNADを補えば老化を遅らせることができるのではないか?ということが考えられると思います。
勘の良い方はもう察しているかもしれませんが、ここで今回の主役であるNMNが、救世主として登場します!
NMNはなぜ老化を防ぐのか?
サーチュインのエネルギー源(NAD)はNMNから作られる
NMNはビタミンの仲間であると先ほどお伝えしましたが、実はNMNは、体内にてサーチュインのエネルギー源であるNADを作るための原料となることがよく知られています。
代表論文:Magni 他, CMLS (2004) [英語論文]
NADがおにぎりなら、NMNはその元となるお米の様なものと言えるでしょう。
つまり、NMNを摂取すれば、体内でNADに変換されるので、加齢と共に減少しつつあるNADを補給できるのではないか?ということが考えられるのです!
いや、ならばそもそもNADをとればいいのでは??
と感じる方も多いかと思いますが、NADは不安定な物質で、経口摂取しても胃や腸内で分解されてしまうらしく、サプリメントとして摂取するにはNADは向いていない様です。
一方で、NMNは経口摂取で血中に取り込まれ、その後NADに変換されて体内のNAD濃度が上がることが、マウスを用いた実験において確かめられています。
参考論文:Kathryn 他, Cell Metabolism (2016) [英語論文]
そのため、サプリメントとして摂取しても、その効果が期待できるというわけです。
さらに2020年に報告された、慶應大学が行ったヒトでの臨床実験においても、間接的ではあるもののNMNが経口摂取によって体内に取り込まれていることが示唆されています。
参考論文:慶應大 伊藤 他, (2019) [和文概要]
さらにこの研究では、ヒトにおいて一年間経口投与し続けても、特に健康上に問題は生じなさそうであることが示されているので、とりあえずは安心して摂取できそうですね(一年以上投与する場合の試験は現在進行中)。
実際にNMNで老化が抑制された例
ここまでで、NMNが老化を防ぐ可能性がある理由について見てきましたが、では実際にNMNの投与で老化が抑制されたという報告はあるのでしょうか?
結論としては、ありました!
マウスにNMNを投与することで、様々な老化からくる疾患の改善が見られたという報告です。
「マウスにおけるNMNの長期投与は老化により生じる生理的機能低下を軽減する。
(Kathryn F. Mills et al., 2016)」
引用論文:Kathryn 他, Cell Metabolism (2016) [英語論文]
しかしちょっと残念なことに、NMNが寿命自体を延長する、というデータは、どのモデル生物でも今のところはまだ得られていない様です・・・
というのにも理由があるようです。
例えばマウスを実験モデルとして用いた場合、平均寿命が3年ほどあることから、寿命が延長されるかどうかを検証するデータを取るには少なくとも3年以上の年月がかかります。
つまり、実験はしているがまだ結果が出ていない、というのが現状の様です。
ましてやヒトでの臨床試験となると・・・
立証するにはかなりの年月が必要ですよね。
というわけで、NMNが寿命を伸ばすと言うデータは今のところ出ていないのですが、原理的には伸ばす可能性を秘めていますので、将来性は十分にあると思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。
NMNは老化を遅らせ、健康でいられる期間を伸ばす可能性が高い一方で、それが私たちの寿命自体の延長につながるかどうかはまだ検証中である。
という結論にまとめられるでしょう。
人の寿命は長いので、NMNが人間においても本当に効果を示す、という結論が得られるのは、まだまだ先になってしまうかと思います。
しかし、実際にマウスをはじめとする実験動物ではその効果が立証されはじめているため、筆者としては信じてみる価値は大いにあると考えています。
我々生物は、見た目は違えど、持っている機能は共通していることが多いからです。
今後の研究結果に期待しながらも、実際に自分で試してみる価値は十分ありそうですね!
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