あなたは本当にその年齢??今話題の【エピジェネティック年齢】について解説します

エピジェネティクス
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ポイント

  • 暦に基づいて決まる「実年齢」と、細胞や組織の機能に基づいて決まる「生物学的年齢」は、必ずしも同じとは限らない
  • 「エピジェネティック年齢」とは生物学的年齢の一種で、”DNAのメチル化レベル”によって算出される年齢のこと
  • エピジェネティック年齢は、生活環境によって改善することができる

生物学的年齢とは?

突然ですが、皆さんは今、おいくつですか?

この質問には、自分が生まれた歳を覚えていれば、ほとんどの人が即答できますよね。
なぜ即答できるのかといえば、それは、今の暦と自分が生まれた暦の差から導き出せる年齢だからでしょう。
では、ここでもう1つ質問です。

それは、本当の年齢ですか?

急に何を言っているのか、そんなの当たり前だろうと思われると思います。確かに、「実年齢」だけを考えれば、あなたが仰る通り冒頭での解答が本当の年齢かもしれません。しかし、ここで1つ、ある事実をお伝えしましょう。

実は、「実年齢」=「本当の年齢」とは限らないのです!

どういうこと?と思われていることでしょう。なぜなら、おそらく皆さんは「年齢は実年齢しかない」と考えているからです。しかし、残念ながらそれは間違いです。思い返してみてください。過去にあなたは「肌年齢」や「血管年齢」を測定したことはありませんか?そうです。「実年齢」以外にも、年齢を測定することがあるんです。

あるニュースを紹介しましょう。

2022年2月24日に掲載された「Scientific BREAKTHROUGH: DNA discovery finds 
some in 60s have genetic age of 20-YEAR-OLD」というニュースです。
アメリカ・南カリフォルニア大学の研究グループが、4000名を超える57歳以上の人
を対象に、エピジェネティクスの調査を行った結果、(エピジェネティクスって何?
という方は、とりあえずそういうものがあると認識してください。後で解説します。)
実年齢は66歳だが、生物学的には114歳と判定された人や、
逆に実年齢は59歳だが、生物学的には23歳と判定された人がいることが分かった。

というニュースです。

「生物学的に〇〇歳」とはどういうことかというと、生まれた暦から年齢を決めているのではなく、”その人の細胞や組織の機能”によって年齢を決めている、ということです。この年齢のことを「生物学的年齢」といいます。

この場合、実年齢は66歳だが、生物学的年齢は114歳とはどういうことかというと、実際は66歳だが、体の細胞や組織の機能は114歳レベルであるということです。つまり、暦の実年齢よりも、体の機能は”老けている”ということになります。

これらのことから分かるように、年齢には、「実年齢」だけではなく、「生物学的年齢」もあるのです。つまり、実年齢だけでは、本当の年齢は決められないということになりますよね。

では、生物学的年齢はどうやって決めていると思いますか?

また、人によって生物学的年齢が違うのはなぜだと思いますか?

今回はそんな疑問に答えるべく、「エピジェネティクス」に触れながら解説していきたいと思います。この記事を読めば、生物学的年齢、エピジェネティック年齢、DNAのメチル化について知ることができますので、ぜひ最後までお読みください。

エピジェネティクスとは?

皆さんは、「エピジェネティクス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
エピジェネティクスとは、簡単に言いますと、「DNAの塩基配列を変化させずに、遺伝子発現を制御する働き」のことです。(ここでは、簡単な説明にとどめておきますので、エピジェネティクスについてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。)

どういうこと?と思われるかもしれません。ご安心ください。
1つ1つ説明していきます。

まず、遺伝子発現とは、DNAの塩基配列が持つ遺伝子情報を基に、細胞や組織で機能するタンパク質を作り出すことです。言い換えると、遺伝子発現の最終目的はタンパク質を作り出すことで、そのためには、DNAの塩基配列が持っている遺伝子情報が必要である、ということです。(ここでは、簡単な説明にとどめておきますので、DNAの塩基配列~遺伝子情報についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。)

ここで注目してほしいことがあります。
それは、
DNAの塩基配列は生まれた時から決まっているため、生涯変わることはありません。しかし、エピジェネティクスは、食事や生活環境によって後天的に変わることがある。
ということです。

なぜ、ここに注目してほしいと思いますか?それは、エピジェネティクスが変わると遺伝子発現も変わってしまうからです。
え、遺伝子発現が変わってしまうことってそんなに重要なの?と思われるかもしれません。しかし、これはとても重要なことなのです。

先ほど説明したとおり、私たちは、本来決められたDNAの塩基配列の遺伝子情報を基に、遺伝子発現をしています。嚙み砕いて言うと、私たちは本来、自分にとって「いるもの」と「いらないもの」が設計図(=DNAの塩基配列)によって決められており、その設計図通りに「いるもの」を作り、「いらないもの」を作らないという作業=遺伝子発現)をしています。

エピジェネティクス正常

 

 

エピジェネティクスはDNAの塩基配列を変えることはありません。
では、エピジェネティクスが変わって、遺伝子発現が変わるとはどういうことだと思いますか?

それは、本来「いるもの」が作られなくなり、「いらないもの」が作られてしまう可能性があるということです。
DNAの塩基配列=設計図が変わらなくても、作られるものが変わってしまうということなのです。

エピジェネティクス異常

つまり、エピジェネティクスに異常があると、本来の遺伝子発現も異常になってしまうため、病気や疾患を引き起こしやすくなってしまうのです。

DNAのメチル化とは?

皆さん、エピジェネティクスについてなんとなくお分かりいただけたでしょうか?
さて、ここからは、エピジェネティクスの具体的なお話に移ります。

エピジェネティクスの1つに「DNAのメチル化」があります。
これは、DNAのCpGという配列の部分で、C(シトシン)に-CH3という分子(メチル基)が結合するという現象です。(詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。)

DNAのメチル化が起こると、遺伝子発現のスイッチがOFFになります。

これにより普段は、発現する必要のない遺伝子の発現をOFFにしています。
これは、DNAの塩基配列を変えている訳では無いので、エピジェネティックな制御であると言えます。

DNAの塩基配列メチル化

エピジェネティック年齢とは?

これまで、「生物学的年齢」、「エピジェネティクス」、「DNAのメチル化」について解説してきました。もし、それぞれについてまだよく分からない方がいましたら、各項目にお戻りいただいて、もう一度お読みください。

さて、前置きが長くなりましたが、ここからは「エピジェネティック年齢」について解説していきたいと思います。

近年、ヒトの組織を用いた様々な研究により、”DNAのメチル化レベルと生物学的年齢には高い相関がある”ということが分かってきました。
参照:Epigenetic clock analysis of diet, exercise, education, and lifestyle factors

このDNAのメチル化レベルから算出される生物学的年齢を「エピジェネティック年齢」といいます。

つまり、DNAのメチル化レベルが上がれば上がるほど、生物学的年齢が高くなる=細胞や組織が機能低下する=老いているということがいえる可能性が高いということです。
DNAがメチル化されると遺伝子発現がOFFになる訳ですから、新しいタンパク質が生成されないため、老化するのは当然のことかもしれません。

DNAのメチル化比較

しかし逆に言えば、DNAのメチル化レベルを下げることができれば、生物学的年齢も低くなるため、実年齢よりも体の細胞や組織を若く保つことができるといえます。

エピジェネティック年齢を若返らせるには?

実年齢はご存じの通り、変えることができません。
では、「エピジェネティック年齢」は実年齢と同様に、変えることはできないのでしょうか?

答えはNOです。
エピジェネティック年齢は改善することができるのです!
その理由は、これまで述べてきた通り、エピジェネティクスは生活環境や食事によって後天的に変わるものだからです。

では、どうやったらエピジェネティック年齢を若返らせることができるの?と思われると思います。
その疑問にお答えするべく、エピジェネティック年齢と生活環境について調べた論文をいくつか紹介します。

「生涯ストレスは、都市部のアフリカ系アメリカ人コホートにおけるエピジェネティックな老化を加速します:糖質コルチコイドシグナル伝達の関連性」

参照:Lifetime stress accelerates epigenetic aging in an urban, African American cohort: relevance of glucocorticoid signaling

累積的な生涯ストレスは、エピジェネティックな老化を加速する可能性があります。これは、糖質コルチコイドによって誘発されるエピジェネティックな変化によって引き起こされている可能性があります。

「ビタミンDの状態が最適ではない太りすぎおよび肥満のアフリカ系アメリカ人のエピジェネティックな老化に対するビタミンD3補給の効果:無作為化臨床試験」
参照:Effects of Vitamin D3 Supplementation on Epigenetic Aging in Overweight and Obese African Americans With Suboptimal Vitamin D Status: A Randomized Clinical Trial
ビタミンDの補給が、エピジェネティックな老化を遅らせる可能性があることが示唆された。

「食事療法とライフスタイルの介入を使用した
エピジェネティックな年齢の潜在的な逆転:パイロットランダム化臨床試験」
参照:Potential reversal of epigenetic age using a diet and lifestyle intervention: a pilot randomized clinical trial

食事・睡眠・運動などの生活習慣の改善によりエピジェネティックな年齢を低下させる可能性があることが示された。

これらの他にも、たばこや大気汚染への影響を減らしたり、十分な睡眠をとることが抗老化に良い影響を与えることが報告されています。

つまり、人によってエピジェネティック年齢が違うのは、人によって生活環境が異なるからであり生活環境の見直しによってエピジェネティック年齢は改善できるといえます。

まとめ

実年齢の他に「生物学的年齢」、特に「エピジェネティック年齢」があると知っていかがでしたでしょうか?

実年齢は目には見えませんが、エピジェネティック年齢はDNAのメチル化レベルを測定することで数値として分かります。
「実は、実年齢よりも体は老化が進んでいた…」「見た目以上に体の細胞は老化していた…」なんてことがあったら、少しショックですよね…。

生活習慣を見直すきっかけになるかもしれませんので、1度、自分のエピジェネティック年齢を測定してみるのも良いと思います。エピジェネティック年齢が測定できる企業があれば、1度お問い合わせしてみるのも手ではないでしょうか?

以上、「エピジェネティック年齢」についての解説でした!

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